2009年07月29日

『3S活動は目的じゃない。ゴールはその先にあるんです』

株式会社共伸技研
http://www.kyoushingiken.co.jp/
代表取締役 加藤克典氏

<プロフィール>
■大阪府出身
■1992年 大阪産業大学工学部卒業と同時に、
       株式会社椿本チエインに就職。
       コンベヤ設計者として7年間勤務。
■2000年 父親が経営していた株式会社共伸技研に入社。
      工業用ブラシ専門サイト「ブラシビレッジ」を立ち上げ、
      ネットでの受注件数を大幅に増やす。
      製造業BtoBサイトのさきがけとして注目されるように。
■2008年 同社の代表取締役に就任。
      3S運動を中心に、全社を巻き込んだ
      生産革新に取り組んでいる。



■スタッフ構成を教えてください。

社員さんは現在20名です。
そのうち女性が4名、男性が16名。
年齢構成ですが、60歳以上の方が多く、
その下ががらっと空いていて、次が38歳の私になります。
そして30代、20代の若手社員と続きます。

40、50代の社員さんがいませんので、
ベテラン層から若手への技能継承が、
弊社でも大きな課題となっています。



■加藤さんがスタッフに求めることは何ですか。

まずは、「変わっていくこと」に抵抗を持たないこと。
現状にただ固執するのではなく、
むしろ変化を好むような人がいいですね。
そして、常に問題意識を持ち、
それを自分で解決しようとする能力
があるかどうかも、
大切なことだと思います。

■そのためにされているのが、3S活動ですね。

そうなんです。
3S活動とは、「整理・整頓・清掃」の徹底を意味します。


数年前から全社を挙げて取り組んでいるんですよ。
毎日10分、毎週30分を使ってテーマを決め、
現場やオフィスの整理・整頓・清掃を行っています。

3S活動は、何も社内美化だけを目的としているものではないんです。
身の回りを整理・整頓・清掃するという行為を通して、
モーションマインド(問題を発見し対処する能力)を身に付けてほしい

例えば、拭き掃除をしていると、いろいろと面白いことに気付きます。
一見ホコリが積もっていないように見える机でも、
ひと拭きすると拭いた部分がきれいになります。
そこで初めて、「あぁ、この机って汚れていたんだ~」と気付くんです。


 

出来てないところが目に付くようになると、
そこに手を出してきれいにする。
すると、状況は今まで以上に良くなる。

これの繰り返しが、実はトレーニングになるんですよ。
問題点を気づく感性と、それを解決する能力が養われるんです。

■3S活動を始められたきっかけは。
今でこそ、社内はキレイに整理整頓されていますが、
3S活動を始める前は、本当にぐっちゃぐちゃだったんです。
在庫や製品が入ったダンボール箱が、
至る所に棚に山積みにされていて…。

 

例えば当時、お客さんから電話があって、
「注文した商品どうなってる?」と聞かれるとします。
すると、工程管理の概念がありませんでしたから、
まずはその商品の在りかを、突き止めるところから始めるワケです。

ブラシの毛を植毛する部署に行って、
「あの商品、植えてくれた?」と聞くと、
「植えたよ。場所は分からないから、次の工程の人に聞いてみて」と言われる。

次の工程に聞きに行くと、
「あの辺のダンボールに入ってるんちゃうかなぁ」と言われ、
結局、周囲を巻き込んでの大騒動の末、
ダンボールの底からようやく商品を見つける、そんな状況でした。

 


数十分単位で時間をロスしていたわけですが、
この行為がムダだということにすら、気付いていませんでした。

製造現場の職人さんも、今日は何するのか、1日の業務量を掴めない。
手配する側の営業担当も、商品の動きを把握できない。
気づいたら大物を同じ納期に設定しているとか、
しょっちゅうありましたね(笑)
何とかしたいなと思ったんです。

 


■最初は、社内で抵抗はなかったのですか。

2000年に弊社に来たとき、状況を改善しようと思いましたが、
社長を含めて誰も相手にしてくれませんでした(笑)。

そんなときにインターネットで出会ったとある社長さんに
アドバイスをもらったんです。
町工場の親父は売上げが好きやから、とにかく実績を作ってみろ、と。

自分なりに何か始めようと、
工業用ブラシ専門サイトを立ち上げていたんですが、
それをがむしゃらに頑張ろうと決めました。

ネットが軌道に乗り、ある程度の実績を積めました。
ちょうどそのタイミングで、
ある会社の社長さんから一緒に3Sやってみませんかと言われて。

自主的に3Sを始めてくれた有志グループの熱意と根気が通じて、
社内全員で3Sのスタートが切れました。

もちろんネットでの売上げ実績を上げていたことも
評価していただけたんだと思います。


■まずはどんなことから始めたのですか。

最初は工程管理・生産管理の徹底だけを考えていたんです。
ところがある専門家の方から、
3S・5Sが出来ていないと、工程管理なんて論外だと言われまして。
そこで、要るものと要らないものを徹底的に分けて、
要らないものを処分する「整理」から始めました。

 


■スタッフとの接し方で、意識されていることはありますか。

コミュニケーションの在り方を、考えるようになりましたね。
実は、私自身あまりコミュニケーションが得意なほうではないんです。

どちらかといえば、引きこもっているほうが楽なぐらい(笑)。
意識しなかったら、自分の仕事に没頭しがちになってしまう方なんです。
でも社長として、そうもいかんなぁと思って。

そこで、今年の抱負の1つに「積極的に社員さんに話しかける」を入れました。
事務所にいるだけではなく、
できるだけ時間を作って現場をウロウロするようにしています。

もう1つ意識しているのは、「行動で示す」ことです。
いくら「こうしなさい!」と指示しても、
頭で理解しただけでは、行動に移せませんから。

私自身が社員さんの規範となるように、
心がけています。

■3S活動以外に、取り組まれていたことはありますか

まずは朝礼を充実させましたね。
以前までは、挨拶程度で終わっていたんです。

でも、それだけではもったいない、と。
売上げなどの情報交換を、社員さんと積極的にすることで、
全員に会社の状況を知ってもらう。

また朝礼は、3S活動の内容を深く理解してもらうための貴重な機会でもあります。
何が目的で、何をしたいのか。

「工程の効率を向上させて、安全快適、かつ効率的な職場を作るのが最終目的」
毎朝同じ話を繰り返しながら、3S活動の重要性を理解していただいています。

■他にも取り組まれていることはありますか。

最初にお答えしたように、60代のベテランが持っている技能を
若手へ継承することが急務となっています。
これまではOJTで、仕事の中で「コレを覚えてくださいね」というのが中心でした。
ところが忙しい時期などは、まるでうまく行かない。

業務量が落ち着いてきたことと、人員を増やすせたことで、
余裕ができ、新しい試みを始めています。
そのひとつが「スキルマップ」の活用です。


スキルマップは、各従業員の方の技能の習得状況を
ひと目で分かるように表にしたもの。
その中には技能ごとに、丸く塗りつぶすチェック項目があって、
「教えてもらえばできる」、「たずねながらできる」、
「1人で完全にできる」、「人に教えることができる」という区切りがあります。

数ヶ月に1度の面談で、社員さん一人ひとりと話し合い、
「この項目はできた」「次はこれを覚えてほしい」などと話を詰めるんです。

また各人のやりたいことなども、このタイミングで確認します。
常日頃から現場でリーダーとそういう話はしてもらっているんですけど、
日常業務があると、本人の意思や目標もあいまいになりがちですから。
お互いの確認と整理の意味合いも込め、私やリーダーを交えて話をします。

■今後、力を入れていく制度などはありますか。

ちょうど今月からなんですが、
若手メンバー中心に4つのプロジェクトチームを作って、
月1回ミーティングを行うことにしました。


私がやりたいと思っていることを、
プロジェクトチームに助けてもらいながら、実現していく。
3~4名のメンバーで終業前の1時間ほどミーティングを行い、
その後に飲みに行くんですよ(笑)。

プロジェクトチームを通して、
ベテラン社員さんから技術を学び取ったり、
私と一緒に生産能率士4級の通信教育を受けたり…。

営業や製造など、部署ごとに次世代のリーダーを
育てたいですね。

■今後はスタッフから、考えを発信してもらいたい、と。

もちろんです。
さらに言えば、社員さん全員の知恵と力を集めて、
会社全体をいい方向に持って行きたいと考えています。

私1人が持っている力よりも、
社員の皆さんのほうが圧倒的にレベルが高い。
私1人がもんもんと考えていることなんか、
大抵つまらないことですので。


■加藤さんにとって、社員の方が「笑顔」になる条件とは。

ベースは、身体と心が健康であること。
それから、誇りを持ってやりがいを持って仕事ができる職場かどうか
この二つが揃って初めて、「笑顔」で仕事ができると思うんです。

何年も前から製造業の仲間で話し合っているんですが、
この業界に若い子が来ないのは、製造業は若者の間でダサイと思われているから。

実は製造業ってかっこいいんやで
ということをもっともっとアピールしないとダメなんですよ。
まずは、現場で働いている人がイキイキしている。
働く楽しさを、自分たちの子供に自信を持って伝えられる。
それが大切なんだと思います。

今、定職に就かない若者がいるじゃないですか。
それも私たちの責任なんですよ。
僕たちから「仕事ってしんどい、つらい…」としか言ってなかったら、
そりゃ働くのがイヤになりますよ。

仕事って楽しい、人の役に立つって楽しい、仲間がいるって楽しい。
そういうことを情報発信していきたい。
まずは、僕らの会社がそうならないといけないし、
これが弊社の目指すべき姿です。

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