2009年09月30日

会社にいるのが楽しくなる、そんな組織を作りたい。

治部電機株式会社
http://www.jibu.co.jp/

代表取締役 治部 健氏

<プロフィール>
■大阪出身
■1990年 創業者でもある父の跡を継ぎ、
      21歳の若さで変圧器メーカー治部電機(株)の社長に就任。
■2005年 豊中工場を開設。
      現在まで、業務改善や人材育成など、
      様々な社内改革に取り組んでいる。


本社工場

■スタッフさんは何名おられますか?
正社員、パート、業務委託の方、合わせて25名です。
男女比は、男性は21名、女性が4名と
男性がやや多めですね。

■年齢構成は?
40代は私1人。50代、60代の方はそれぞれ4名ずつです。
後のスタッフは、全員が20代と30代の若手になります。
他の企業さんから見れば、かなり若いんじゃないでしょうか。


■年齢層が若いだけに、技術ノウハウの伝承が大変では?
そうなんですよ。だから、ちょうどこの5年間くらいは、
技術の伝承に真剣に取り組んできました。
若手の大半は、この5年間に採用した方ばかりです。
その一方で、50代の方の採用も進めてきました。
彼らには、マネージャークラスの業務をしてもらっています。
今は彼らを中心に、組織の基盤固めをしている最中ですね。



(直流耐電圧試験装置)
この電圧レベルの装置を有しているメーカーは、ごくわずか。
半導体製造装置電源変圧器の試験などに使用されています。


■他に、企業としての課題はありますか?
人材面で組織を固めていくと同時に、
システムの面でも組織作りを進めています。
まず、就労規則の見直しや、組織図の整理などを行いました。
部門ごとの責任者・リーダーは誰で、どんな役割を担ってもらうのか。
責任と権限を明確化して、より効率的なシステム作りを目指しています。

今後、企業規模を拡大していくためには、
正社員数を30名以上にするのが必須だと考えています。
ところが、ただ採用すればいいというわけではないんです。
社内体制や評価制度をきっちりと整えて、
まずは「この会社に勤めていたら安心だよ」って
従業員の方に感じてもらえる組織を作っていきたいですね。


■安心して働ける組織を作るのって、
簡単ではないと思うのですが、
どんな取り組みをされているのですか?

いろいろとやっているんですけど、一番大切にしている考え方は、
「従業員にもっと経営参画して欲しい」ということです。
そのために、会議やミーティングなどの機会を積極的に持つようにしています。

もともとウチは、会議がなかった会社なんですよ。
昔は従業員も4、5人そこそこだったから、朝出社してきて、
立ち話で「今日はこれとこれをやろう」っていう程度でよかったんです。
ただ従業員が30人近くなって、どうもこれではダメだな…と。
従業員と対話する機会を増やそうと思いました。


3S運動(整理・整頓・清掃)に取組んでおられます。


■具体的にはどんな会議をされているのですか?

まずは、全社勉強会や会議を定例的に行うことにしました。
その中では、部門ごとに改善提案などをしてもらうんですが、
何より特長的なのは、その場で会社の売上や利益、
損益などをすべて公表するんですよ。
経営状況を理解し、変化を目の当たりにしてもらうだけで、
皆の取り組む姿勢やモチベーションが格段に変わりますね。

また、2年前から外部のコンサルタント会社さんに入っていただき、
会議についての意見を頂いています。
それまでの会議って、本当にひどいもので、
2、3時間ある会議のうち、私が半分以上話していたんですよ(笑)。
でもコンサルタントの方から、
自分で進行しながら、しかも決定権まで持つのは
すこし無理があるんじゃないか、と言われまして。
そこで社内でファシリテーターを養成し、
発言を促したり、話の流れを整理してもらう役割の社員を、
参加させるようにしています。
ほかにも、しっかり事前準備をしたり、記録を残したり、
それまでできていなかったことができるようになり、
会議の質は劇的に変わりましたね。

■他にはどんな会議がありますか?

マネジメントレビュー(MR)会議がありますね。
もともとISOを取得する際のプロセスとして、
マネジメントシステムが正しい方向に運用されているかを検討する会議を
年に2回は持ちなさいという項目があったんです。
毎月やったらダメと一言も書かれていないから、
じゃあ毎月やろうと(笑)。

不良品や不具合を報告しあうのが目的なんですが、
そこでは、バランススコアカード(BSC)を取り入れています。
BSCにはまず、会社としての大きなビジョン・目標が掲げられ、
その達成のために各部門がどんな動きをすればいいかが明文化されています。
もちろん話し合う中で課題が出てくる。
それを誰が担当して、いつまでに解決するのかを話し合う。
全社のコンセンサスがとれ、有機的な内容の会議になっています。

もう1つ、特長的なのは昼のミーティングですかね。
豊中工場と本社の間で、毎日スカイプを使った会議を行っているんです。

2005年に豊中工場が完成して以来、
会社の規模拡大と比例するように、社員間の交流が薄れた時期がありました。
そこで、担当者全員がヘッドフォンを掛けて、
「今日、豊中ではこういう業務をしているから、伝票を回してください」とか
「今日これが出荷だから、お客さまとのやり取りをよろしく」とか、
連携を取れるようにしています。
連絡ミスに起因するクレームって、結構あるじゃないですか。
だからシステムとして、毎日やるようにしています。



豊中工場

■治部社長の理想のスタッフ像は?

理想は1つじゃない、いろんなタイプが居ていい。
そう思います。
従業員1人1人が、いい面をたくさんお持ちなんですよ。
その人の強みというか、個性が出せればいいと思います。

だからこそ、それを伸ばして上げられる環境を作らないといけないし、
生かせるような配置にしないといけない。
これが経営者の責任だと思いますね。
当社では、従業員にも各種セミナーに行ってもらったり、
資格取得を支援する補助金制度なども取り入れています。

■働いておられる方には、どんな方が多いですか?

課題があれば何とか解決しようと、努力できる人が多いですね。
チャレンジして結果を出したり、ダメでも改善ができたり。
そのために、周囲のスタッフとコミュニケーションを図れるかどうかも、
人材を採用する際には、重視するようにしていますので。

会社としてコミュニケーションをバックアップするため、
「ありがとうカード」も取り入れています。
全社でだいたい1ヵ月に150~200枚出るんじゃないでしょうか。

そもそも“働く”っていう言葉は、
「傍(はた)を楽(らく)にする」という意味があると思うんです。
誰かが周囲を楽にしてくれているんだから、
ちゃんとそれを伝えないといけない。
このシステムを通して、そんなコミュニケーションの
バックアップができればと考えています。
ゆくゆくは枚数に応じたインセンティブなんかも、実施したいですね。

■従業員の自主性の高さの秘訣は?

会議の進め方など、外部からノウハウを取り入れたのが、
良かったんじゃないかと思っています。
会議を通して、人材採用や配置についても
どんどん意見が上がってくる。
それによって、私自身も負担が軽減されて、
また別の新しいことを考えられるというメリットもありますね。

結局のところ、働く人が安心感を持てるかどうかが大事だと思うんです。
チャレンジできる場があって、
もし失敗しても、それが次に生かされるような…。
ひと言でいえば、会社にいるのが楽しくなるような、
そんな組織を作っていきたいですね。

2009年07月29日

『3S活動は目的じゃない。ゴールはその先にあるんです』

株式会社共伸技研
http://www.kyoushingiken.co.jp/
代表取締役 加藤克典氏

<プロフィール>
■大阪府出身
■1992年 大阪産業大学工学部卒業と同時に、
       株式会社椿本チエインに就職。
       コンベヤ設計者として7年間勤務。
■2000年 父親が経営していた株式会社共伸技研に入社。
      工業用ブラシ専門サイト「ブラシビレッジ」を立ち上げ、
      ネットでの受注件数を大幅に増やす。
      製造業BtoBサイトのさきがけとして注目されるように。
■2008年 同社の代表取締役に就任。
      3S運動を中心に、全社を巻き込んだ
      生産革新に取り組んでいる。



■スタッフ構成を教えてください。

社員さんは現在20名です。
そのうち女性が4名、男性が16名。
年齢構成ですが、60歳以上の方が多く、
その下ががらっと空いていて、次が38歳の私になります。
そして30代、20代の若手社員と続きます。

40、50代の社員さんがいませんので、
ベテラン層から若手への技能継承が、
弊社でも大きな課題となっています。



■加藤さんがスタッフに求めることは何ですか。

まずは、「変わっていくこと」に抵抗を持たないこと。
現状にただ固執するのではなく、
むしろ変化を好むような人がいいですね。
そして、常に問題意識を持ち、
それを自分で解決しようとする能力
があるかどうかも、
大切なことだと思います。

■そのためにされているのが、3S活動ですね。

そうなんです。
3S活動とは、「整理・整頓・清掃」の徹底を意味します。


数年前から全社を挙げて取り組んでいるんですよ。
毎日10分、毎週30分を使ってテーマを決め、
現場やオフィスの整理・整頓・清掃を行っています。

3S活動は、何も社内美化だけを目的としているものではないんです。
身の回りを整理・整頓・清掃するという行為を通して、
モーションマインド(問題を発見し対処する能力)を身に付けてほしい

例えば、拭き掃除をしていると、いろいろと面白いことに気付きます。
一見ホコリが積もっていないように見える机でも、
ひと拭きすると拭いた部分がきれいになります。
そこで初めて、「あぁ、この机って汚れていたんだ~」と気付くんです。


 

出来てないところが目に付くようになると、
そこに手を出してきれいにする。
すると、状況は今まで以上に良くなる。

これの繰り返しが、実はトレーニングになるんですよ。
問題点を気づく感性と、それを解決する能力が養われるんです。

■3S活動を始められたきっかけは。
今でこそ、社内はキレイに整理整頓されていますが、
3S活動を始める前は、本当にぐっちゃぐちゃだったんです。
在庫や製品が入ったダンボール箱が、
至る所に棚に山積みにされていて…。

 

例えば当時、お客さんから電話があって、
「注文した商品どうなってる?」と聞かれるとします。
すると、工程管理の概念がありませんでしたから、
まずはその商品の在りかを、突き止めるところから始めるワケです。

ブラシの毛を植毛する部署に行って、
「あの商品、植えてくれた?」と聞くと、
「植えたよ。場所は分からないから、次の工程の人に聞いてみて」と言われる。

次の工程に聞きに行くと、
「あの辺のダンボールに入ってるんちゃうかなぁ」と言われ、
結局、周囲を巻き込んでの大騒動の末、
ダンボールの底からようやく商品を見つける、そんな状況でした。

 


数十分単位で時間をロスしていたわけですが、
この行為がムダだということにすら、気付いていませんでした。

製造現場の職人さんも、今日は何するのか、1日の業務量を掴めない。
手配する側の営業担当も、商品の動きを把握できない。
気づいたら大物を同じ納期に設定しているとか、
しょっちゅうありましたね(笑)
何とかしたいなと思ったんです。

 


■最初は、社内で抵抗はなかったのですか。

2000年に弊社に来たとき、状況を改善しようと思いましたが、
社長を含めて誰も相手にしてくれませんでした(笑)。

そんなときにインターネットで出会ったとある社長さんに
アドバイスをもらったんです。
町工場の親父は売上げが好きやから、とにかく実績を作ってみろ、と。

自分なりに何か始めようと、
工業用ブラシ専門サイトを立ち上げていたんですが、
それをがむしゃらに頑張ろうと決めました。

ネットが軌道に乗り、ある程度の実績を積めました。
ちょうどそのタイミングで、
ある会社の社長さんから一緒に3Sやってみませんかと言われて。

自主的に3Sを始めてくれた有志グループの熱意と根気が通じて、
社内全員で3Sのスタートが切れました。

もちろんネットでの売上げ実績を上げていたことも
評価していただけたんだと思います。


■まずはどんなことから始めたのですか。

最初は工程管理・生産管理の徹底だけを考えていたんです。
ところがある専門家の方から、
3S・5Sが出来ていないと、工程管理なんて論外だと言われまして。
そこで、要るものと要らないものを徹底的に分けて、
要らないものを処分する「整理」から始めました。

 


■スタッフとの接し方で、意識されていることはありますか。

コミュニケーションの在り方を、考えるようになりましたね。
実は、私自身あまりコミュニケーションが得意なほうではないんです。

どちらかといえば、引きこもっているほうが楽なぐらい(笑)。
意識しなかったら、自分の仕事に没頭しがちになってしまう方なんです。
でも社長として、そうもいかんなぁと思って。

そこで、今年の抱負の1つに「積極的に社員さんに話しかける」を入れました。
事務所にいるだけではなく、
できるだけ時間を作って現場をウロウロするようにしています。

もう1つ意識しているのは、「行動で示す」ことです。
いくら「こうしなさい!」と指示しても、
頭で理解しただけでは、行動に移せませんから。

私自身が社員さんの規範となるように、
心がけています。

■3S活動以外に、取り組まれていたことはありますか

まずは朝礼を充実させましたね。
以前までは、挨拶程度で終わっていたんです。

でも、それだけではもったいない、と。
売上げなどの情報交換を、社員さんと積極的にすることで、
全員に会社の状況を知ってもらう。

また朝礼は、3S活動の内容を深く理解してもらうための貴重な機会でもあります。
何が目的で、何をしたいのか。

「工程の効率を向上させて、安全快適、かつ効率的な職場を作るのが最終目的」
毎朝同じ話を繰り返しながら、3S活動の重要性を理解していただいています。

■他にも取り組まれていることはありますか。

最初にお答えしたように、60代のベテランが持っている技能を
若手へ継承することが急務となっています。
これまではOJTで、仕事の中で「コレを覚えてくださいね」というのが中心でした。
ところが忙しい時期などは、まるでうまく行かない。

業務量が落ち着いてきたことと、人員を増やすせたことで、
余裕ができ、新しい試みを始めています。
そのひとつが「スキルマップ」の活用です。


スキルマップは、各従業員の方の技能の習得状況を
ひと目で分かるように表にしたもの。
その中には技能ごとに、丸く塗りつぶすチェック項目があって、
「教えてもらえばできる」、「たずねながらできる」、
「1人で完全にできる」、「人に教えることができる」という区切りがあります。

数ヶ月に1度の面談で、社員さん一人ひとりと話し合い、
「この項目はできた」「次はこれを覚えてほしい」などと話を詰めるんです。

また各人のやりたいことなども、このタイミングで確認します。
常日頃から現場でリーダーとそういう話はしてもらっているんですけど、
日常業務があると、本人の意思や目標もあいまいになりがちですから。
お互いの確認と整理の意味合いも込め、私やリーダーを交えて話をします。

■今後、力を入れていく制度などはありますか。

ちょうど今月からなんですが、
若手メンバー中心に4つのプロジェクトチームを作って、
月1回ミーティングを行うことにしました。


私がやりたいと思っていることを、
プロジェクトチームに助けてもらいながら、実現していく。
3~4名のメンバーで終業前の1時間ほどミーティングを行い、
その後に飲みに行くんですよ(笑)。

プロジェクトチームを通して、
ベテラン社員さんから技術を学び取ったり、
私と一緒に生産能率士4級の通信教育を受けたり…。

営業や製造など、部署ごとに次世代のリーダーを
育てたいですね。

■今後はスタッフから、考えを発信してもらいたい、と。

もちろんです。
さらに言えば、社員さん全員の知恵と力を集めて、
会社全体をいい方向に持って行きたいと考えています。

私1人が持っている力よりも、
社員の皆さんのほうが圧倒的にレベルが高い。
私1人がもんもんと考えていることなんか、
大抵つまらないことですので。


■加藤さんにとって、社員の方が「笑顔」になる条件とは。

ベースは、身体と心が健康であること。
それから、誇りを持ってやりがいを持って仕事ができる職場かどうか
この二つが揃って初めて、「笑顔」で仕事ができると思うんです。

何年も前から製造業の仲間で話し合っているんですが、
この業界に若い子が来ないのは、製造業は若者の間でダサイと思われているから。

実は製造業ってかっこいいんやで
ということをもっともっとアピールしないとダメなんですよ。
まずは、現場で働いている人がイキイキしている。
働く楽しさを、自分たちの子供に自信を持って伝えられる。
それが大切なんだと思います。

今、定職に就かない若者がいるじゃないですか。
それも私たちの責任なんですよ。
僕たちから「仕事ってしんどい、つらい…」としか言ってなかったら、
そりゃ働くのがイヤになりますよ。

仕事って楽しい、人の役に立つって楽しい、仲間がいるって楽しい。
そういうことを情報発信していきたい。
まずは、僕らの会社がそうならないといけないし、
これが弊社の目指すべき姿です。